2011年3月21日月曜日

参上!




お彼岸は雨の予報だったので
家族で一日早いお彼岸のお墓参りをした

歩く私の横に颯爽と正義の味方が参上した
とても無敵のように見えた
しかもかわいい


地震の時ひとりぼっちだった家に
偶然だが香港に住む姉が一時帰国
そして地震前日からスペインに行っていた両親が帰国
救われた

家族と離れて東京にひとりで住む人たちのことを思う
どうか誰かと繋がっていてほしいと思う

放射能のことが心配で姉や両親が帰国するべきではないかもしれないとメールを送った
姉は「とりあえず帰ります」と帰ってきた
母は帰国後「家族みんなが一緒なら死んじゃってもいいよねってパパと話したのよ」と言った
なぬーーー!?と思ったが
そもそもそういう両親のもとに生まれた私だったと思うことにした
それに仙台には妹がいる
不自由な生活の中でたくましくやっている
好意で無料で営業していた美容室で長かった髪を短く切ってもらったという
妹を置いてどこかへ逃げるわけにはいかない


生きることは楽しい
いろんな人といろんな話をしたい
いつか家族を持ちたい

2011年3月17日木曜日

無題


2011年3月16日水曜日

ほくほくさつまいも



地震の次の日に帰宅した時の家の様子は
空き巣に入られた時の記憶を思い出せた
今回は見えざる大きな手が引き起こしたことだというのが違う点

大体は棚の上の軽いものが落ちていた
滑りのよい引き出しは少し前へ出ていた
壁にかけた額は傾いていた
何かが少しずつ違うような家の様子

次の日の仕事に備えて準備をしていたが
キャンセルの連絡が入る
交通が大混乱
原発の事故のニュース
事態は関東でもやさしくなさそうだと感じた

次の日も「無理して来なくていい」と仕事がキャンセル
地震のニュースをずっとつけて情報を絶やさずにいた
そのせいか落ち着かず不安感にかられ
たくさん食べたり
地震で落ちたものなどを片づけられずに2日が過ぎた
ぼんやり横になったりした
これからどうなるんだろう 日本? 私。

その次の日も外へ出る仕事はなかったが
家の中で画像を処理し郵送した
世間との関わりを再開したせいか少し気分が上がり
料理をすることにした
常備菜を作っておこう
ひじきの煮物、きつね色に揚げたさつまいもで大学芋、それから小豆を煮てあんこを作った
どれも好きなものばかり

こんな時はきっとみんな自分の一番好きなことをしてる
大好きなあの人は歌を作っているだろうし
お腹に新しい命を宿したあの人はお腹を優しくなでているだろう
私は料理を作る 写真を撮りたいとは思わなかった

ニュースを見るのはほどほどにして
じっと心に耳を傾ける
自分の生きる力を信じること
みんなの生きる力を信じること
心が折れそうなときはしばしぼんやりした後に大好きなことをするといいね

2011年3月13日日曜日

122(ワン・ツー・ツー)をひたすら行け

地震があった時、取材から社に戻ってエレベーターホールでボタンを押していた

いつも点くはずのボタンの明りが点かない
何度も押す 「故障かな?この忙しい時に」と思った
するとビルの壁やガラスの扉がゆ~らゆ~ら揺れだした
あ、まずい 来るぞ

天井の高いエレベーターホールもエントランスもガラスに囲まれて
逃げる場所が見当たらない
ガラスではない壁に身を寄せて
受付嬢と手を取り合ってうずくまった
警備員さんが「ガラスから離れてください!」と叫ぶ
しかしここはガラスだらけ
天井のガラスが今にも落ちてきそうに思えた
これが最期の時なのかとか考えた
揺れは長く長く続いた 揺れよ止まれと念じた

揺れがおさまって早く職場に戻らなければと
私はまたエレベーターのボタンを押した
来るはずもない もちろん明りも点かない
機材を担いで階段を上がる
災害とはこういうことかと知る

写真部では既に陸路で仙台へ向かう第一班が出発
続いて第二班は空路、東京のヘリコプターがだめなら大阪から
日没が近い、それならセスナか
とにかくいち早く現場に一人でも多くたどり着くこと

テレビでは田園地帯を大きな水の塊が飲みこんでいく
ゆっくりと確実に不気味に 車も家屋も橋も道路も
押し寄せ積み上げられた白い車の山から火の手が上がる
余震は続く

朝を迎えて都内では電車が動き出したという情報
11時過ぎに上野駅に到着
電車が動いていても乗れるとは限らない
上野駅は蛇のうろこのように人人人の頭が通路から階段の上まで埋め尽くしている
こんなところにいられない 堪らなくなって歩きだした

いい天気でよかった
上野駅からまっすぐ北上、鴬谷駅そばの交番で家までの道を訊く
「それなら122(ワン・ツー・ツー)だな」とおまわりさん
ひたすら行って、ところどころに駅があるから乗れそうなら電車に乗りなさい

122は家につながっている
道は必ずどこかに続いている
私はきっと大丈夫だ

2011年3月4日金曜日

デモなどない。お前どこで見た。



先日新聞の見出しを見て笑ってしまった。

リビアのカダフィ大佐が言ったという言葉。

「デモなどない。お前どこで見たんだ。国民はみな私を愛している。」



もうずいぶん前にリビアから来た使節団の写真を撮ったことがあった。
車で移動中、宗教の話になった。彼らはイスラム教を信じている。
アッラーは太陽、唯一の神でそれ以外の神などありえない。
アッラーを信じないとしたら君は一体何を信じているんだ?

私は私の中をひととき見渡して日本人代表としてどう答えようか考えた。
自然?八百万の神?どれも違う気がした。
「myself」とぽろっと答えた私に
今まで聞いたこともないナンセンスを目の当たりにしたという風に目を剥いた毛深い顔を時々思い出し私はほくそ笑む。

信じることはすばらしいし誰にも止められない




(写真は博多のにわかせんぺい)