2011年10月29日土曜日

仕事が終わらない

「仕事が終わらないの」
と電話口で母に言った。

勝手に会社を辞めて(「辞めます」とは言ったけど)、今の仕事を始めてから12年、初めて弱音を吐いた。

すると電話の向こうで母は
「え?仕事がないの!?」

「違う違う、仕事が終わらないの」
「なんだ、じゃぁいいじゃない」
よくないよー と言うと、終わったら晴々としてるわよ、と能天気。

電話を切ってから、確かに、仕事がないより仕事が終わらないほどある方がいいな、「仕事がないの」なんて死んでも母に言いたくない、と思った。

好きな仕事ができてる自分がとても幸せに感じられた。

感謝しています。

2011年10月24日月曜日

御殿、空を飛ぶ


大野慶人さんと指人形さん 新・港村会館ハンマーヘッド横野外にて
ダンサーのサミーちゃんの誘いで横浜に出かけていった。
大野一雄フェスティバル2011
みなとみらい線の馬車道駅6番出口を出て、まっすぐひたすらに海を目指して歩いて行くと新港村に着いた。
この日はまず建物の外でのパフォーマンス「大橋可也&ダンサーズ」。照明は車のヘッドライト。男女の美しい死体が動いているような動きなんだけど、突然激しくなって、女の人がこけた。もう一度、こけた。それでパフォーマンスが終わるころにはその人の膝と肘には血がにじんできた。その人の痛みを想像しながら、なまぬるい風の中で吹かれていた。
次のパフォーマンスは屋内へ場所を移して。村田峰紀さん。まっ白いシャツを両手に持ったクレヨンやマジックペンで塗りこめていく。観客には背中しか見せない。背中がどんどん色に染まっていく。でも体がかたいのか、塗れる場所が限られていて、それがちょっと悲しかった。もうちょっと体が柔らかければあの白い部分にも手が届くのに。彼の息遣いだけが会場に響いた。
次は大きなゾウやロバのオブジェが見守る「動物園」にて、アンサンブル・ゾネ。ここでサミーちゃん登場。洗練された動き。シンプルな装いにストイックな動きがGAPの宣伝を思い出させる。ベーシストの井野信義さんのコントラバスが低く動きに合わせて鳴る。
また場所を移して、和紙に囲まれた円形劇場。李冽理(りれつり)さんは2010年WBA世界スーパーバンダム級王座獲得のボクサー。着ていた上着を脱いでスパーリングが始まる。パンパンパンと小気味いいリズムと見えないほど速いパンチ。首から肩にかけてじわじわと汗が浮いてくる。彼はただいつもと変わらぬことをやっていたのだと思うけれど、すごいパフォーマンスだった。感動した。スパーリングの終わり頃に再びベースが鳴りだして、今度はアンサンブル・ゾネの代表岡登志子さんの踊り。空間をゆがませるほどの力があるなと感じた。
次。海の見える広い部屋。梅棒のみなさんのパフォーマンス。ポップで楽しいダンスと演劇。天国の審判のシーンではSPEEDのGo!Go!Heavenで踊っていた。集団の踊りがびしっびしっと決まると文句なしに感動する。よかった。
後ろで普通に見ていたと思った人たちが前へ進み出て「赤い靴」を歌い始める。赤い靴ジュニアコーラスのみなさん。もっとも高い音程の女の人の声が突き抜けていて目が離せなかった。
ざざーっという波の音とともに大野一雄舞踊研究所研究生のみなさんがそれぞれ黒い服を着て薔薇を一輪持ってしずしずと歩いてくる。歩くだけでこんなに人は違うのだと驚いた。みんな違う。
PAをやっていた白塗りの人が大野慶人さん(大野一雄さんの息子さん)で、黒い人々の中を一直線にバケツを頭上に掲げて歩いていった。あのバケツを持つ手が震えていたのは演技なのか自然なのか、どうしてもわからなかった。頭の形がすごくきれいだった。窓の外を客船が灯りを灯しながら行く。
そして、その部屋の外に案内され、海をバックに本日最後の舞台。さきほどの白塗りの大野慶人さん(74歳)が小走りにやってくる。かたちのいい頭にピンクの頭巾をかぶってその上にうさぎの耳のヘアバンドをしている。世にも不思議なものを見た。体は30代のように頑強そうで、びしっとしていて、顔を見ると苦しそうな息をする口がブラックホールのように空いている。彫の深い顔。一通り踊った後、音楽が変わった。大野さんは指人形を抱いて再登場。私の前でぴたっと止まった。その瞬間を写真に撮りたかったけれど禁止されていたので撮れなかった。でも撮ればよかった。あんなのは二度と見られないように思う。照明に照らされた白いおじいさんがうさぎの耳をつけて人形を持ってあなたをじっと見ている。後ろは海。
この世はゆめまぼろし。

2011年10月21日金曜日

TGIF




TGIF. Thanks God, It's Friday!!!

アメリカの高校時代
金曜日には黒板にチョークで誰かがでかでかとこう書いた

なんかこう、人生を、週末を、思い切り楽しんでいる感じでまぶして目がシバシバした

今日は金曜日
おもしろおかしく


(写真は近所の「ハラロール」の青巻。豆乳でつくったクリームたっぷり)


2011年10月17日月曜日

くふき


サイトウさんとコンノくんととっくんで「くふき」

上品なリズムとあったかいメロディと声
音でどこまでも遊び散らかし放題 だけど優しい

なんだろう

3人が3本の優しいきのこに見えてきた

そう、宮崎駿のアニメに出てくるような

2011年10月15日土曜日

ワンピース

わたしがスカートをおさえて

あなたが帽子をおさえた

渋谷からの帰り道

風がある限りわたしは生きていられるような気がして

長袖のワンピースの手首のボタンを外す

2011年10月9日日曜日

秋晴れ昼過ぎからタコ、のちずっとビール


オクトパスエイト発進

写真は、大久保くんの大きなキャンバスに描かれた絵



昨日は楽しみにしていたタコ展がありました。
オクトパスエイトが作る「タコ」についての会。

海部くんが「タコ」について講義、生きたタコを買ってきて麻酔をかけて解剖。
キーダさんとトシさんのふわふわ踊るタコ風船のライブペインティング。
たかくんとえりかちゃんの職人タコ焼き。
カオリさんの小枝アートや、フォトコラージュ。まりもさんの鮮やかな色のアート。
大久保くんの揺れるモビールやタコの絵やデニム地のぬいぐるみ、「のびるっこ」の子どもたちの絵
まいさんの墨絵、かつみくんのショートムービー「タコ兄弟」
タバコジュースの大久保くんととっくんの入魂のライブ。
あと、玉子(たまこ)の絵本の朗読。

これら全部がタコだった。



おととい、「明日タコの朗読をするんです」
と、福桜さんに話すと、
舞台に明るい福桜さんは、
「空間ですよ。そして舞台ではその人の生き方が全部出ます。」
とありがたいような恐ろしいような忠告をしてくれた。

が、いまさら生き方を急旋回するわけにもいかず、当日を迎えた。
玉子としての朗読デビューだった。
はるばるやってきてくれたお客さんを前に朗読をして、
「空間ですよ。」という意味がわかった。
その部屋の気配、ひとりひとりの人がそこにいるということ、におい、音、光、すべてを含んで朗読だった。

みんなの顔がよく見えた。
子どもみたいに二つの目を絵本にしっかり集めて、いい顔をしてた。みんな。
時々くすっと笑ったり、うなずいたりしてくれたことがどんなにうれしかったか。

ありがとうございます。



今朝起きて、昨日のお酒が残る頭で、人生ってこうなんだって思った。
昨日の華やかな、にぎやかな、うれしいすべての出来事はもう過ぎてしまった。
もうすでに新しいページが始まっている。
だけど、昨日を迎える前の私と今の私は違う。
そうやって生きていくんだと思った。
どんな人もどんな悲しいこともうれしいことも、そのままではいない。
ただ、ちゃんと血や肉になっていく。

とにかく何かをするってことはいいことだなって思った。
すごくすごくいいことだなと思った。仲間がいれば鬼に金棒。


昨日はタコの会の準備から、近くのコンビニに走っては缶ビールをプシュっと開けて、金木犀の香りが流れる中、飲みながらやいのやいのと作業をして。
誰も「ビールを飲みながらやってはいけません」なんて言う四角い人はいなくて。
見るとあちこちにビールがあって、ギターの音がして、みんなが笑顔で楽しくて。
大人になるってなんて素敵なことだろう!


とっくんが締めの言葉の中で言ってた。「一番思ったことは…、生きてるってことかな!」
タコが墨をはくのを見たよ。それはもう限界っていうサインなんだって。
タコは生きてた。そして私たちに食べられた。

私も感じたよ、生きてるってことを。













2011年10月7日金曜日

たぬき


披露宴会場の下見に築地の「治作」へ出かけた
旧三菱財閥の岩崎弥太郎の別邸だった建物
お庭の代わりに池があり、まるで建物が水の上に建てられているよう
どの部屋からも見事に太った鯉が踊る池が足元に見える
玄関先に一階の天井を超えるほど大きな信楽焼の水差し、そしてその上にたぬきが乗った焼き物
「なんでたぬき?」と聞くと
「たぬきは他(た)を抜くと言うことで、昔から縁起がいいのです」とのこと
ほほー。
たぬき、たぬき、と思いながら、秋晴れの街に出た。

2011年10月5日水曜日

エクレアとコーヒーと

近所の本屋で『エクレアとコーヒーと詩人』という本を買った。
橋口幸子さん著。
薄い本で、詩人だった故北村太郎さんとの鎌倉や横浜での思い出をぽつぽつと書いている。
タイトルに一目ぼれだった。中身もよかった。
読み終えて本棚の一番目立つところに置いた。
それからエクレアを買ってきて、コーヒーを淹れて飲んだ。
コーヒーの時は『親愛なるキティーたちへ』という可憐な小林エリカさんが書いた本を読んでいた。同時に数冊を読み進める癖がある。
この本は、『アンネの日記』と、同時期に書かれたお父さんの小林司さん(アンネと同い年)の日記を手に、アンネの生涯を辿る旅に出たエリカさんの日記。
ベルリン、ベルゲン・ベルゼン、アウシュビッツ、アウシュビッツ・ビルケナウ。
指先が冷たくなる。
私にはエクレアとコーヒーがあり、あたたかな毛布があり、この部屋がある。
本をお腹の上の毛布にのせて、ごろんと畳に寝転がる。
幸せな昼寝の始まり。外は冷たい雨。