2011年11月17日木曜日

幸せのかたち


パパ・タラフマラの小池さんとリトルモアの福桜さんと大坊珈琲店で落ち合う。
木でできた店内は歩くとぎーぎーと音がする。一番奥の席でテーブルを囲む。
空間と身体と時間の話や、日本の行く末のこと、この場所からまた新しい何かが生まれそうな予感に胸がいっぱいになる。
下の階が工事中で時折、っどどどどどーぎゅいぃぃぃーという音がする。でも全然その音に翻弄されずにマイペースににこにこと話し続ける小池さんと福桜さんの横顔をまぶしく眺めていた。


2011年11月15日火曜日

考えるダイくん

「乾燥してるね」

ある朝ダイくんから電話

「うん、そうだね。乾燥してるね」

「乾燥してるなーと思って電話してみた」

「うん、ありがとう」

それから乾燥について、少し話した。

それから昨日ケンカに巻き込まれたとダイくんは言った。

病院の診察が終わって薬を待っていたら、同じように待っていたおじさんが突然「遅い!いつまで待たせるんだ!」と怒り出した。だからダイくん、「うるさいよ」と言った。だってうるさかったから。

それでおじさんは静かになったんだけど、おじさんが薬を受け取った後に、ダイくんの前に来て「お前さっきのは何なんだ」と言って胸倉をつかんだ。ダイくんはむかつき、周りは騒然となったその時、薬剤師さんの中の一人の男性(ダイくんの知らない人)が

「ダイくん、我慢して!ダイくん、がんばって我慢して。」と言ったのだそう。

ダイくんはなんとか怒りを爆発させずに我慢した。

でも家に帰ってもいらいらとむかついて気持ちが落ち着かなかったので、これまでにあった楽しいことを考えようとしたけれど特になくて、ろくでもない人生だな、と思った。更に考え続けた。さっきあの薬剤師さんはなんで「ダイくん」と自分のことを呼んだんだ?と考えた。

それで思ったのが、あぁいう薬や医療のプロの人たちは、あのような状況の時に下の名前を呼ぶと冷静になれるとか、そんな裏技を知っていて、「ダイくん」と呼びかけたのではないか。

そこまで聞いて私はダイくんの思考の深さに感動した。
ダイくんすごいよ。

私なんて、「ダイくん」って薬剤師さんがダイくんに呼びかけた時点で、薬剤師さんは秘かにダイくんのファンなんじゃない?それで名前もチェックしてたんじゃない?って思った。ザ、浅い思考。

「その薬剤師さんはどんな感じの人だった?大きい人?」と私は聞いた。

「そんなに大きくないけど、がっしりした体形の人だった。」

「胸倉つかまれたら怖くない?」

「怖いよりむかつくよ。だって何も悪いことしてないんだもん。」

「へぇ~。」


なんだか頼もしいな、と私は思った。
ダイくんも、薬剤師さんも。



2011年11月14日月曜日

見るものみな歌の巻

日曜日は乃木神社の骨董市だった
行ってみたら5つくらいしかお店を広げてない
寂しい
吉日のようで、結婚式が分刻みで行われている

来た道を戻りBook246にふらり立ち寄る
ここには旅の本がある
アメリカの昔の絵ハガキ(ブルースカイ、プールサイドのパラソル、水着姿の男女たち)に吸い寄せられて、隣にあった「三原山の大活動」の絵ハガキセットに手を伸ばす
















中にはモノクロの火山の写真絵ハガキ5枚
かっこいい

レジの女の人の白眼の白さに感動して写真を一枚撮らせてもらう
そうしたら、その人は冒険者だった
中学3年の時から世界70カ国を旅してきた
イラクでは戦争が起こっていて
持っていた一眼レフを覗きこんだ瞬間に麻袋を全身にすっぽりかけられて3日間拉致された
それがトラウマで写真が撮れなくなった分だけ、写真を撮る人や、一枚の写真で感じ取ることのできるものの大きさをすごいと思うと話してくれたけど、いやいや、あなたの経験の方がよっぽどすごいです
鉛筆を立てて、手を放してぱたりと鉛筆が倒れた方向に旅をしたりする
ナップザックで行きあたりばったり
驚くのは、その人が少女のように細身で可憐で色白でキュートなこと
由衣さんという名前の通り、自由をまとって生きている
東京にいる間はBook246で旅のコンシェルジュ
フィンランドについて訊ねると
フィンランドはいいですよ
私はフィンランドの森で迷子になって、パニックになりましたが、小川が流れていたので、水はあるし、ベリーも生っているし、なんとかなるかなと思っていたら、大きなトナカイに遭遇して、そのトナカイに食べられる!と思いましたが、トナカイがふんっと無視して行ってしまったのでその後をついて行きました。するとサンタの家に着きました。サンタが家の外で薪割りをしていて、私を見て驚いて「お前、こんなところで何してる?」と聞かれたので、迷子になりまして、と話すと「じゃ、お茶でも飲んでいきなさい」とお茶をごちそうになりました。

おとぎ話のような不思議な話の連続 なるほど白眼が白いわけだ
レジの前にいながらにして世界を旅する30分の立ち話をして、握手をして別れた

高橋源一郎さんの取材が明日だったので『「悪」と戦う』を買って帰る
これは傑作!おすすめ。しかも一日で読める。

次の日、つまり今日の高橋さんの取材
うなずきの連続
「学校へ行くとバカになります」
「楽しいのがいい、みんな歌っちゃえばいい」
「言いたいことを言うのが一番気持ちいい」
みんな知らず知らず言論の自主規制をさせられていることに気づいていない

新刊『恋する原発』は今週末に出る
体育館みたいなところで200組が同時に行為を行うアダルトビデオがあって
監督がメガホンで「じゃ、キスして!」とか指示する
それですべてが終わった後、200組がまったりしている光景をカメラは徐々に上へあがっていく
尾崎豊のバラードみたいな、そのエンディングのためだけに作曲された曲が流れて、それは思わず泣いてしまうほどの感動なのだとか
そういったこと(?)が盛り込まれているらしい

広島県尾道市出身の高橋さん
出会えてよかったな





仙台へ行くの巻

ブルースターは幸運を呼ぶ花
青は佳子ちゃんの好きな色

こまち19号に乗って仙台へ向かう
ほぼ満席で通路側の席と言われたけれど
乗ってみたら結構空いていて、席は窓側だった
いろんな世界が同時進行してる

パンやで買った「セサミ・ブリー」、胡麻の入ったフランスパンにブリーチーズとカントリーローストハムとバター
おいしーーーいとまじまじとパンを見つめてしまう
ブリーチーズって、白カビチーズなのに臭くない まるでミルクの味

通路の向こうの人が新聞を読む
TPPの文字が大きく載っている
TPPTPP軽い響き

大宮の次はもう仙台
東北本線に乗り換えて南仙台へ
妹の家へ向かう
震災の時に入った歪みやガラスが割れて抜けたままの扉などを見る
妹はいつも明るいので深刻な話も明るいが
震災後はひと月お風呂に入れなかったし
余震がずっと続いていて友達の家に避難していたり
ガソリンを買う列に毎日並んで「今日も買えずに帰る」日々があったり
親しい生徒が亡くなったりした

妹の部屋で、彼女が過ごしたいろいろな時間を思った
それにしても、まるで色彩や置いてあるものが男の人の部屋みたいだったので
あれはどうしたものかと考える

次に妹の大学へ向かう
東部道路という高架の高速道路にのってみる
震災の時は津波で流されたものがこの道路でせき止められてこちら側に津波が来るのを防いでくれたのだとか
その日はたまたま高速道路の整備をしていて入場禁止になっていたのだけど
それを破って高速道路にのった人たちが助かったのだとか
高速道路から海まで見えそう
波はあらゆるものをさらってしまったようだ

大学の銀杏は黄色く輝いている
妹の研究室は私の住む部屋よりも大きい
すごいねーと言って天井まである本棚を見上げる
そして1月のダンス公演(私は撮影をする)でどうやって私の人件費を賄うかということをまるでお金儲けのセンスのない私としっかりものの妹が顔を突き合わせて考える
どうやったらみんな写真を買ってくれるかな?
まずはいい写真を撮らなくちゃね

それから近くの「ナルミ・キッチン」で昼食
妹の生徒たちに私と妹が「似てる~!」と言われる

それから妹の部屋に戻り、干した布団を取りこんで
仙台の逆側までドライブして、写真展を見に行く
私には到底撮れないような美しい風景写真
珈琲とパフェを食べながら妹とおしゃべりする
あっという間の夕暮れ

また仙台の逆側に戻り、カフェ「ひなびな」へライブを聴きに行く
大満足のもっと上の満足感のあるライブ
一生懸命さが伝わる
見えてるものや聞こえているもの以上のものが受け取れるのがライブのすごいところ
一日経っても二日経っても、あぁよかったな~と思っている













2011年11月11日金曜日

おばあちゃんのおやつ

1982年4月18日朝日新聞より

「おばあちゃんのおやつ」抜粋

きょうは、福島県の山林で働く人たちのおやつです。
東白川群塙町真名畑字向漁師。山に囲まれた小さな村のおばあさん鈴木キヨさん(七六)から、「蒸しパン」の話が届きました。何となく寒い季節のおやつ、というイメージですが、さにあらず。村でこのおやつを作り始めるのは、ほかならぬ今の季節だというのです。
冬が終わり、日が長くなるにつれて、山の仕事はだんだん忙しくなる。杉の苗を植え、下草や雑木を刈り払い、杉の大樹を伐採、製材・・・・・・。手伝いの人数もふえてくる。
「おやつ時には、蒸しパンを山のようにこしらえては、漬物とお茶を添えて運んでいきます」と。

抜粋以上。


5年くらい前の誕生日に「空手なんかやっていないで料理でもしなさい、と母に言われました」という私に、空手の大先輩の高尾さんが譲ってくださった、切り抜きだけで作られた分厚いレシピ本の中から、蒸しパンを作ってみた。とても簡単で、出来立ては本当に美味しくて懐かしい。バターを置くととろりと溶けて、あぁ幸せ。

福島の山林の営みや季節感をすぐそばに感じながらいただきました。

高尾さん、ありがとうございます。
お元気ですか。




2011年11月8日火曜日

母の誕生日


母の誕生日に実家へ行った
父と母と3人の食卓

食事が終わると恒例のケーキカット
父がろうそくを意気揚々と5本ケーキに立てる
そして火を灯す
部屋の電気を消す
ろうそくの火に母が照らされる
母の願い事は長い
手のひらを合わせて熱心にお願いする
姉のこと、妹のこと、父のこと、私のこと、世界のこと、自分のこともお願いしてほしい

ろうそくを一気に吹き消すと願い事が叶う
ぶーっと一気に吹き消した

真っ暗な部屋
父が電灯を点ける
そして母の前ににこにこ座り

「また3つ違いになったね」


あまーーーーい
何それ。

すると父、
「だって、いつも4つも違うって言い張るんだもん」

11月生まれの母と5月生まれの父、ちょうど半年違うのです





(写真は、東京デザイナーズウィークにて、仙田禎さんのユニットの作品。お料理の気持ちになってみました。)