2011年3月13日日曜日

122(ワン・ツー・ツー)をひたすら行け

地震があった時、取材から社に戻ってエレベーターホールでボタンを押していた

いつも点くはずのボタンの明りが点かない
何度も押す 「故障かな?この忙しい時に」と思った
するとビルの壁やガラスの扉がゆ~らゆ~ら揺れだした
あ、まずい 来るぞ

天井の高いエレベーターホールもエントランスもガラスに囲まれて
逃げる場所が見当たらない
ガラスではない壁に身を寄せて
受付嬢と手を取り合ってうずくまった
警備員さんが「ガラスから離れてください!」と叫ぶ
しかしここはガラスだらけ
天井のガラスが今にも落ちてきそうに思えた
これが最期の時なのかとか考えた
揺れは長く長く続いた 揺れよ止まれと念じた

揺れがおさまって早く職場に戻らなければと
私はまたエレベーターのボタンを押した
来るはずもない もちろん明りも点かない
機材を担いで階段を上がる
災害とはこういうことかと知る

写真部では既に陸路で仙台へ向かう第一班が出発
続いて第二班は空路、東京のヘリコプターがだめなら大阪から
日没が近い、それならセスナか
とにかくいち早く現場に一人でも多くたどり着くこと

テレビでは田園地帯を大きな水の塊が飲みこんでいく
ゆっくりと確実に不気味に 車も家屋も橋も道路も
押し寄せ積み上げられた白い車の山から火の手が上がる
余震は続く

朝を迎えて都内では電車が動き出したという情報
11時過ぎに上野駅に到着
電車が動いていても乗れるとは限らない
上野駅は蛇のうろこのように人人人の頭が通路から階段の上まで埋め尽くしている
こんなところにいられない 堪らなくなって歩きだした

いい天気でよかった
上野駅からまっすぐ北上、鴬谷駅そばの交番で家までの道を訊く
「それなら122(ワン・ツー・ツー)だな」とおまわりさん
ひたすら行って、ところどころに駅があるから乗れそうなら電車に乗りなさい

122は家につながっている
道は必ずどこかに続いている
私はきっと大丈夫だ