「乾燥してるね」
ある朝ダイくんから電話
「うん、そうだね。乾燥してるね」
「乾燥してるなーと思って電話してみた」
「うん、ありがとう」
それから乾燥について、少し話した。
それから昨日ケンカに巻き込まれたとダイくんは言った。
病院の診察が終わって薬を待っていたら、同じように待っていたおじさんが突然「遅い!いつまで待たせるんだ!」と怒り出した。だからダイくん、「うるさいよ」と言った。だってうるさかったから。
それでおじさんは静かになったんだけど、おじさんが薬を受け取った後に、ダイくんの前に来て「お前さっきのは何なんだ」と言って胸倉をつかんだ。ダイくんはむかつき、周りは騒然となったその時、薬剤師さんの中の一人の男性(ダイくんの知らない人)が
「ダイくん、我慢して!ダイくん、がんばって我慢して。」と言ったのだそう。
ダイくんはなんとか怒りを爆発させずに我慢した。
でも家に帰ってもいらいらとむかついて気持ちが落ち着かなかったので、これまでにあった楽しいことを考えようとしたけれど特になくて、ろくでもない人生だな、と思った。更に考え続けた。さっきあの薬剤師さんはなんで「ダイくん」と自分のことを呼んだんだ?と考えた。
それで思ったのが、あぁいう薬や医療のプロの人たちは、あのような状況の時に下の名前を呼ぶと冷静になれるとか、そんな裏技を知っていて、「ダイくん」と呼びかけたのではないか。
そこまで聞いて私はダイくんの思考の深さに感動した。
ダイくんすごいよ。
私なんて、「ダイくん」って薬剤師さんがダイくんに呼びかけた時点で、薬剤師さんは秘かにダイくんのファンなんじゃない?それで名前もチェックしてたんじゃない?って思った。ザ、浅い思考。
「その薬剤師さんはどんな感じの人だった?大きい人?」と私は聞いた。
「そんなに大きくないけど、がっしりした体形の人だった。」
「胸倉つかまれたら怖くない?」
「怖いよりむかつくよ。だって何も悪いことしてないんだもん。」
「へぇ~。」
なんだか頼もしいな、と私は思った。
ダイくんも、薬剤師さんも。